こんにちは。柏の葉税理士事務所の徳田大輔です。
本稿では、こちらの本を読んで、「丁寧な仕事」について考えてみました。
池田輝男「『丁寧』なのに仕事が速い人の習慣 感謝され、利益も2倍になるビジネスの絶対法則」(2022年、幻冬舎)
1) 本の概要
著者は池田ピアノ運送㈱の代表取締役。220名のスタッフを束ね、ピアノ、大型家電、OA機器など大型精密機器の配送、設置などを行っている方です。私とほぼ同い年で、お隣の野田市出身。親近感が湧きます。
著者は、妻の家業であるピアノ運送会社に入社し、「当たり前のこと」を従業員に徹底することで、業界トップの地位を築きました。「当たり前のこと」とは、きれいに挨拶する、清潔なユニフォームを着る(着替える)、整理整頓、報連相などです。
もちろん、これらを形式的になぞるだけではありません。常に「丁寧な仕事」を心掛け、仕組みをつくり、実行し、お客様を感動させたからこそ、多くの人の信頼を勝ち取り、仕事の幅を広げることができたのです。本書では、著者がなぜ「丁寧な仕事」にこだわるのか、どのような取り組みでどのような成果を上げたのかが、分かりやすく記されています。
例えば「清掃」を「就業時間中に行うべき大事な仕事」と位置づけ、全社員に持ち回りで担当区域を割り当てて、社長自身が採点を行います。高い点数を取ると食事券が振る舞われます。多くの経営者が、号令や張り紙だけ行い、あとは従業員の自主性に委ねるのとは、大違いですよね。
2) 私が注目した箇所
著者は「お客さまが見ているのは『技術』ではなく『マナー』」と断じます。例えば冷蔵庫の修理依頼を受けた業者が帰った後に、冷蔵庫が直っているのは当たり前のこと。もしかしたら高度な技術を使って短時間で仕上げたのかも知れませんが、ほとんどの客はその価値を判断できません。それよりも、設置場所をピカピカに掃除してくれたなど、立ち居振る舞いや所作に心を動かされると説きます。
また、仕事における基本的なマインドについて、ピーター・F・ドラッカー「マネジメント」の3人の石工の例(なぜあなたは石を切り出す仕事をしているのかと問われ、1人目は「これで暮らしを立てているのさ」、2人目は「国中で一番、腕のいい石切の仕事をしているのさ」、3人目は「今自分は歴史上にいつまでも残る、偉大な大寺院をつくっているんだ」と答えた)になぞらえ、ピアノの運送屋であれば、1人目は「ピアノを運ぶことで生計を立てているのだ」、2人目は「ピアノを傷つけずに運び、キレイに拭きあげて、完璧な状態で納品しているのだ」と答えるところ、自社の社員は「自分が運んでいるのは、単にピアノというだけのものではない。とある家族の思い出であり、団らんの記憶であり、一族の人生そのものなのだ」と考えるよう育てるそうです。
著者の会社では、素直な人を採用する、一人暮らしで自立心を養ってもらう、コミュニケーション術を授けお客様の話を聞けるようにする、お客様アンケートを共有する、社内外でサンクスカードを送り合う、といった取り組みをしています。
3) 税理士の仕事に置き替えてみる
ほとんどの税理士事務所は、経営目的や事業内容を「お客様のため」と謳っていることと思います。もちろん、嘘いつわりのない気持ちであり、事実でしょう。顧問先の適正な損益計算ができなければ、事業の存続も納税もうまくできないのですから。
しかし、日々の仕事の一つ一つに向かう時、われわれ税理士は、また作業スタッフは、「お客様のため」「事業に関わる全ての人のため」と思えているでしょうか。「(できることならやりたくないが)生活のためにやっている」というマインドに陥ってはいないでしょうか。改めて、自分を戒めたいと思います。
本書に則るなら、まず外形的なところで--
身なりを整える
礼儀正しく振る舞う
明るい表情で話す
行動では--
メール返信や電話折り返しをできるだけお待たせしない
報告・連絡・相談を適切なタイミングと方法で行う
お客様をよく観察し、話を聞き、お困りごとを見極める
全力を尽くす
といったことが挙げられるでしょうか。
「なぜ税理士をやっているのか」と問われたとき、「お客様のビジネスを通じて、子どもたち・孫たちによりよい社会を残すためにやっているのだ」と胸を張って答えられるよう、マインドを整え、スキルを高めていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。