こんにちは。柏の葉税理士事務所の徳田大輔です。
本稿では、会社が実施する従業員の健康診断について整理します。
・会社の義務
・会社の経費処理
・会社の経費とならない場合の経理処理
1) 会社の義務
会社は、労働安全衛生法第66条に基づき、従業員に対して定期的に健康診断を実施する義務があります。健康診断の種類は、次のとおりです(詳細は厚生労働省ウェブサイトなどでご確認ください)。
①雇入時の健康診断
「常時使用する労働者」を雇い入れる際に実施します。「常時使用する労働者」にはパート、アルバイト、派遣社員、嘱託職員などを含み、学生アルバイトであっても、週所定労働時間が20時間以上の場合などは、健康診断の実施が必要となります。
②定期健康診断(年1回)
「常時使用する労働者」に対し、1年以内ごとに1回実施します。
③特定業務従事者の健康診断(6ヶ月に1回)
「深夜業を含む業務」や「病原体によって汚染のおそれが著しい業務」などに常時従事する労働者に対し、その仕事に就ける時および6ヶ月ごとに実施します。
④海外派遣労働者の健康診断
「海外に6ヶ月以上派遣する労働者」に対し、派遣時と帰国後国内業務に就かせる時に実施します。
⑤給食従業員の検便
「事業に附随する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者」に対し、その仕事に就ける際に実施します。
会社は、健康診断の結果を5年間(例外あり)保存する必要があり、また異常の所見のある労働者については、医師の意見を聞き、必要な措置を講じなければなりません。従業員のプライバシーに介入することへの躊躇や当惑があるかも知れませんが、従業員の健康に配慮せず業務命令を下していたことにより、事業主が責任を問われかねません。従業員には必要な説明を行った上で、健康診断結果は必ず確認し、適切に対応しましょう。
2) 会社の経費処理
会社が実施する健康診断費用については、原則的に会社の経費に算入できます。勘定科目は「福利厚生費」とするのが一般的です。
役員や特定の地位にある人だけを対象としてその費用を負担するような場合には問題が生じますが、希望者が全員、会社負担で診断を受けることができ、著しく高額でなければ、問題ありません。
健康診断費用は、会社が医療機関に支払っても、従業員が一時的に立て替えて後日会社で精算する方法でも構いません。
3) 会社の経費とならない場合の経理処理
①役員のみが恩恵を受ける場合
他に社員がいるにも関わらず、役員や特定の地位にある人だけが健康診断を受ける場合は、その費用の支払いは、その者への役員報酬(給与)となります。
役員報酬には「定期同額」の原則がありますので(詳細は割愛)、当該支払には源泉徴収税が課され、かつ法人税の計算上、経費算入不可となる可能性がありますので、注意が必要です。
役員のみが高額な検診を受ける場合も、同様の扱いを受ける可能性があります。
②治療を受ける場合
健康診断で病気が発覚し、治療を受けることとなった場合、その治療に係る費用は、労働災害に起因する場合を除き、治療を受ける本人が負担すべきものとなります。よって、会社が負担してはいけません(負担した場合は、その者への給与として課税されます)。
本人が治療のために支払った金額は、確定申告における医療費控除の額に算入されます。医療機関での支払額が一定額以上になった場合は、高額医療費制度により一部が還付される場合があります。
なお、民間の医療保険から手術、入院、通院、特定疾病、高度障害、がん診断などに係る保険金を受領した場合、この収入は非課税であり、所得税・住民税を課されることはありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【参考資料】
厚生労働省ウェブサイト
税務通信