元プロレスラーの飲食店経営

日常・雑感

こんにちは。柏の葉税理士事務所の徳田大輔です。
元プロレスラーが飲食店経営について書いたビジネス本が面白かったので、ご紹介します。

 川田利明「開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える『してはいけない』逆説ビジネス学」(2019年、ワニブックス)

 松永光弘「オープンから24年目を迎える人気ステーキ店が味わったデスマッチよりも危険な飲食店経営の真実」(2020年、ワニブックス)

お二人が異口同音に「飲食店経営は地獄」、「プロレスよりきつい」と言うのが印象的です。


1) 川田利明「開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える『してはいけない』逆説ビジネス学」(2019年、ワニブックス)

全日本プロレス四天王の一人、川田利明氏が自身のラーメン屋経営について書いた本です。「この本を読んで『こんなに大変なら、やっぱりラーメン屋になるのはやめよう』と思ってくれる人がいてくれたほうが、俺はいいと思っている」という書き出しから、著者の無骨さが伝わってきます。

そう、甘い言葉で「君も成功できるよ」とささやいたり、「お前も男なら挑戦してみろ」と焚きつけたりするより、「俺はこんな傷を負った。つらいから止めておけ」と忠告する方が親切なことってありますよね。私が28歳で師事した農業の師匠もそうでした。それでも、情熱に火がついた夢追い人は止まらないことを知っているから、精一杯のエールを送ってやる・・・。

川田氏も、「初期投資は回収できないものとして腹を括れ」、「新規オープン時でも不格好な接客はしてはいけない」、「利益をひたすら追求するなら商品に手間をかけすぎてはいけない」、「撤退を恥と思うな」と、最大限のはなむけをくれます。

とても親切で、やさしい人だと思います。

2) 松永光弘「オープンから24年目を迎える人気ステーキ店が味わったデスマッチよりも危険な飲食店経営の真実」(2020年、ワニブックス)

デスマッチ(過激なプロレスの試合形式)の第一人者としてプロレスファンの間で有名な松永光弘氏が、自身のステーキハウス経営について書いた本です。出版社と編集人は上記1) と同じです。

「即断即決と創意工夫で生き残ってきた」、「お金よりも大切にしてきたのは、肉の質と味、そして人情だ」と、プロレスラーとしての知名度ではなく自分の力でお店を守ってきたという自負が滲み出ます。

有刺鉄線、五寸釘バット、ワニ・サソリ・ピラニアなどを使ったハチャメチャなプロレスで人気を博した方なので、さぞや飲食店経営も破天荒かと思いきや、意外と堅実・冷静に自己分析されています。色気を出して多店舗・他業種展開し失敗したことも、気持ちいいくらいさらけ出されます。そう、失敗や弱さをさらけ出せる強さというものがあるのです。

松永氏も、「飲食業界の常識をまず疑え」、「常に目玉商品を提供し続けるべし」、「毎日、新規客を開拓する心持ちで闘え」、「手を抜けるところは堂々と手を抜け」と、惜しみないアドバイスを送ってくれます。

3) 自分の事務所経営省みる

お二人の飲食店経営の共通点として、次の要素が挙げられます。
① 名義貸しビジネスはしない。あくまでも自分が厨房に立ち、料理を提供したい。
② 駅から離れた立地に出店してしまった。川田氏は自宅に近いことが唯一のメリット。松永氏は宣伝の工夫や近所との交流でハンデを克服。
③ 店の内装・ダクト工事から自動券売機の設定まで、自分でやれることはすべて自分でやった。

いささか強引ですが、これらと対比させて、自分の事務所経営を省みました。

①自分でサービスを提供することについて。もちろん私は名義を貸せるような有名人ではないのですが、自分の手でサービスを提供したいという考えには共感します。作業を従業員に任せたのち自分の名義で成果物を提出する税理士はたくさん存在します(従業員および成果物を適切に管理していれば、違法ではありません)が、目が行き届かなくなるリスクを憂いて、私も自分ひとりで働いています。

松永氏は店の広さから従業員を雇っていますが、川田氏は基本的にひとり営業。「バイトテロ防止」は極端としても、従業員管理にコストをかけなくて済むのは、ひとり税理士の大きなメリットと、改めて実感いたします。

②立地について。在宅勤務やオンライン会議が普及した現在では、税理士事務所の立地の優位性はかなり薄れており、恵まれていると感じます。

松永氏は町会長から祭りへ2千円の寄付を求められたときに2万円の寄付を申し出て信頼を得るようになり、地元客を増やしていきました。私も開業後、税理士会の会合への出席や役員活動への参加を積極的に心掛けているところであり(勤務時代は時間的・心理的制約からあまり参加できておらず)、松永氏の行動に勇気づけられました。

③すべて自分でやることについて。プロフィール写真の撮影や事務所ロゴの作成は、さすがに技術やセンスが必要なのでプロに委託しました。手づくりにこだわっているのは事務所のウェブサイトづくりです。IT技術に親しむため、また商品メニューや看板を業者を介さず自由にアレンジできるよう、自分の手でつくることを心掛けています。


アマゾンキンドル(電子書籍)のおすすめに乗って、元プロレスラーの飲食店経営に関する本を続けて読んでみました。元プロレスファン、かつ飲食店勤務や税理士として飲食店の経営を見た経験もあり、共感できること、勉強になることが多かったです。そして、かつてのヒーローたちが第二の人生でも汗と涙にまみれつつ必死に生きているのが、非常に感慨深い! この方々が元気なうちに、ぜひお店に食べに行かねばと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


【追記】
24年4月13日、ミスターデンジャー立花本店で「ステーキ&ハンバーグセット」ポテトサラダ付2,900円をいただいてきました。期待どおり、いいお店でした。

途中、松永さんが近づいて来られた際、カウンター越しに「本を読んで来ました。(いい本を)ありがとうございました」と声をかけたところ、わざわざ客席へ出てきて、「昔こんなことをやってました」と、名刺代わりのショップカード(裏面に地図、電話番号、営業時間など)を手渡してくれました。当時、週刊プロレスを購読してましたので、よく存じてます!

徳田大輔

千葉県柏市の「ひとり税理士」です。財務コンサルと税務顧問により、経営者様をサポートいたします。会計ソフトはマネーフォワードを使用。マネーフォワードの導入支援や業務効率化支援を得意としています。

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