[定額減税] 所得税の「月次減税額」

事業経営

こんにちは。柏の葉税理士事務所の徳田大輔です。

定額減税の「月次減税事務」の開始時期が少しずつ近づいています。
人数の多い事業所は、4月中には準備を始めた方が良さそうです。

この記事では、所得税の「月次減税額」の管理に必要な事務処理を整理しました。説明を平易にするため、あえて大雑把な表現にしています。正確な情報は国税庁ウェブサイトなどで確認いただきますようお願いいたします。


1) はじめに

2024年度に行われる定額減税は、主に、給与から天引きされる所得税・住民税を減額することで行われます。減税額は、扶養家族の数に応じて社員ごとに異なります

所得税の減税額は、事業主が適正額を把握し、毎月の給与・賞与支給ごとに残高を確認する必要があります。下記2)、3)の事務処理は、社員ごとの減税額の管理のために行うものです。

住民税は市町村からの通知に従って天引・納付すればよいので、事業主には特段の手間は発生いたしません。

2) 2024年5月までに事業主が行うべきこと

①控除対象者の確認
・令和6年6月1日現在で在職の社員のうち、源泉徴収税額表「甲欄」の人(自社に扶養控除等申告書を提出している人)が「月次減税」の対象となります。

・対象者を間違えることはあまりないとは思いますが、勤務形態や役職が変更となる社員について後々混乱することがないよう、雇用契約書、賃金台帳などの書類は法令に従って適正に作成し保存することが望まれます。

②同一生計配偶者・扶養親族の確認
・控除対象者について、「同一生計配偶者および扶養親族」、すなわち、生計を一にする親族で、「年間の合計所得金額が48万円以下」(収入が給与のみの場合、給与収入が103万以下)の方を確認します。

基本的には、従来の扶養控除等申告書で把握できますが、「源泉控除対象配偶者」に名前の記入があったとしても「年間の合計所得金額48万超」であれば、定額減税の計算には含まれないことに注意が必要です。

・社員の配偶者の給与収入が103万超150万以下の場合、その社員には配偶者控除特別控除は適用されますが、配偶者分の定額減税は受けられないこととなります。配偶者分は、配偶者自身が勤務先で定額減税を受けます。

・子や老親などの「控除対象扶養親族」は、もともと「年間の合計所得金額48万以下」が要件ですので、全員が定額減税の計算に含まれることとなります。

16歳未満の扶養親族は、「扶養控除」の適用はありませんが、定額減税の減税額の計算には算入されます。混乱しないよう気をつけましょう。

・社員自身の合計所得金額が900万超と見込まれ、同一生計配偶者を扶養控除等申告書「源泉控除対象配偶者」欄に記載していない社員さんからは「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」を受けることで、人数を把握することとなっています。中小企業には滅多にないケースとは思いますが、いちおう注意が必要です。

③帳簿の備え付け
・「各人別控除事績簿」を作成し、各社員の「月次減税額」を記録していきます。「各人別控除事績簿」は国税庁ウェブサイトから雛形をダウンロードできます。

・(社員本人+同一生計配偶者+扶養親族の人数)×3万円が、その社員の月次減税額となります。

・「各人別控除事績簿」は給与ソフトで対応してほしいところですが、残念ながら、投稿日現在、マネーフォワード クラウド給与は対応できていないようです。

【追記】その後、マネーフォワード社が、MFクラウド給与・MFクラウド年末調整で定額減税への対応を行うことを発表しました。

3) 2024年6月以降、事業主が行うべきこと

①社員別 減税額の把握
給与・賞与の支給ごとに、「各人別控除事績簿」に減税額を記入し、残高を確認します。言うまでもありませんが、減額し過ぎないように気をつけましょう。

・誕生や死亡により扶養親族等に変動があった場合においても、月次減税額は増減しません。

②基準日在職者が退職した場合
年末調整をしなかった退職者には、通常どおり源泉徴収票を発行します。定額減税の実施状況について、特段の記載は必要ありません(転職先の年末調整又はご自身の確定申告により、定額減税を加味した調整が行われます)。

退職金に源泉徴収税が課される場合の税額計算は従来どおりです。退職所得に対し月次減税は行いません(退職者が確定申告することにより、定額減税を加味した納税額に調整されます)。

2024年12月に、年末調整を行った社員が退職した場合には、源泉徴収票の摘要欄に、「源泉徴収時所得税減税控除済額×××円」、「控除外額×××円」など記載します

③6月以降に入職した場合
・6月2日以後に雇用した社員については、月次減税は行いません。年調減税にて定額減税を受けていただくこととなります。


手間ばかり多くて、困ってしまいますね。
総務省ウェブサイトによると、今回の定額減税は、日本の「デフレ脱却のため」だそうですから、頑張りましょう!(苦笑)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

徳田大輔

千葉県柏市の「ひとり税理士」です。財務コンサルと税務顧問により、経営者様をサポートいたします。会計ソフトはマネーフォワードを使用。マネーフォワードの導入支援や業務効率化支援を得意としています。

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