[消費税]不要論を考える。

日常・雑感

こんにちは。柏の葉税理士事務所の徳田大輔です。
本稿ではこの本を題材に、著者の消費税不要論を整理してみます。
 森永卓郎「ザイム真理教」(2023年、三五館シンシャ)


1) 本書の概要
本書は、財務省が謳う「財政均衡主義」の矛盾を突き、一部の特権階級のために、いかに国民生活が虐げられているかを糾弾するものです。

日本政府は国内に土地などの莫大な資産を持ち、かつ通貨発行権を有していることから、重税を課す必要はないと説きます。そして、高級官僚や富裕層が受ける恩恵を減らすとともに、庶民の税負担を軽減すれば、景気は回復し、生活は豊かになると主張しています。

2) 著者が消費税を不要と考える根拠
広く知られていることですが、消費税には「逆進性」があります。高所得者ほど税負担が軽くなるという意味です。

年収500万の人と年収5000万の人を比べたとき、年収500万の人は収入のほとんどを生活に使うこととなり、支出額500万の大部分に消費税が課されることとなります。かたや年収5000万の人は、豪華な料理を食べ、高価な服に身を包み、景気よく遊んだりして、たくさんのお金を使いますが、収入の全額を使う訳ではありません。例えば2000万は消費して3000万は貯金するでしょう。つまり年収5000万の人は支出2000万についてしか消費税を納めないのです。

また、消費税率が高くなると、実質所得が減少します。今まで500万円分の生活ができていたのに、490万円分の生活しかできなくなるみたいなことですね。そうすると消費関連の企業売上が下がる。企業はリストラしたり正社員を非正社員に置き替えたりして人件費を削る。生活者はまた所得が落ちて消費が減少するという悪循環に陥ります。

裏を返せば、消費税率を下げる、あるいは消費税を廃止することによって、消費が増え、企業の売上が上がり、人件費を多く出すことができるということです。つまり、人々の生活が安定し、豊かになります。

ところで著者は、富裕層は自分の会社を持っているか、会社の経費を自由に使える人たちであり、仕入税額控除の仕組みを利用して、実質的に消費税を負担することなく、モノやサービスを利用できる恩恵に預かっていると批判します。消費税については、支払う側が個人であろうと法人であろうと、支払った金額に含まれる消費税額が支払先を通して国に渡ることから、批判には当たらないように考えます(このスキームのメリットは、累進課税税率である所得税の負担を軽減できることです。つまり、「給与収入5000万」とするより、「給与収入3000万、会社収入2000万・会社支出2000万」とする方が、「所得税の負担は激減、法人税負担ほぼゼロ」で有利になります)。

3) 私の考え
税理士試験で「消費税法」を受験して税理士になった私にとって、消費税不要論は足場を崩される不快さを伴います。同時に、消費税法を勉強して感じた気持ち悪さを払拭してくれる福音のようにも感じます。例えるなら、排水管の汚れを指摘され、そして掃除してもらったような感覚でしょうか。別のブログ記事でも述べたように、免税点制度、複数税率、非課税取引などに関し、現行の消費税法複雑で不公平な制度になっています。

税率を一律8%にして景気が回復する可能性があるなら、期間限定でいいからトライしてみてはどうでしょうか、というのが、現時点での私の意見です。

2兆3000億円の所得税減収と1兆円強の住民税補填(地方交付税交付金)を伴う「定額減税」をあんなに簡単に施行できるのであれば、消費税を一時的に1~2%(税収減2~4兆円)下げることもできるはずです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【参考資料】
NHKウェブサイト「令和6年度予算」
日本経済新聞

徳田大輔

千葉県柏市の「ひとり税理士」です。財務コンサルと税務顧問により、経営者様をサポートいたします。会計ソフトはマネーフォワードを使用。マネーフォワードの導入支援や業務効率化支援を得意としています。

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