[消費税] デジタルインボイスって何だろう?

事業経営

こんにちは。柏の葉税理士事務所の徳田大輔です。

唐突ですが、次の言葉はご存じでしょうか?
 デジタルインボイス
 Peppol(ペポル)
 JP PINT

別に、専門用語をひけらかして自慢したいわけではありませんので、ご安心ください。実は、私も本稿を執筆する日の朝まで、「時々聞いたことがある」程度で、よく分かっていませんでした。ただ、近年の税理士法改正により、税理士は「電磁的方法を活用して納税義務者の利便性向上を図る」ことが求められていますので、いつまでも知らないまま放置することはできません。

そこで、本稿では、上記のキーワードを読み解きながら、中小事業者への影響を占ってみたいと思います。私の理解が浅かったり、言葉が足りないところがあるかも知れませんが、何とぞご了承ください。一緒に少しずつ、デジタル社会に馴染んで参りましょう。

 ・デジタルインボイスって何?
 ・現在の普及状況は?
 ・中小事業者への影響は?


1) デジタルインボイスって何?
デジタルインボイスとは、「オンライン上で請求書データを送受信する仕組み」です。デジタル庁の言葉を借りると、「デジタルインボイス(Peppol e-invoice)とは、請求情報(請求に係る情報)を、売り手のシステムから、買い手のシステムに対し、人を介することなく直接データ連携し、『自動処理』される仕組み」ということです。

現在、企業間の取引において、請求書は紙で受け渡しするのが一般的ですし、デジタル化が進んだ場面においても、紙がPDFファイルに、郵送が電子メールに置き換わった程度ではないでしょうか。つまり、買い手は、受領した請求書を自社サーバに保存するとともに、請求内容を自社のシステムに入力する必要がある訳です。

デジタルインボイスを使うと、このような「保存」や「入力」をする必要がありません。おそらく「確認ボタン」を押すだけで、売り手の発した情報が全て自社システムに記録されます。これにより、入力ミスやデータ改ざんがなくなるとされています。

たとえ売り手と買い手が異なる業務ソフトを使っていても、問題ありません。なぜなら、 Peppol(Pan European Public Procurement Online、ペポル)という、電子文書を相互運用するための国際規格に基づいて、日本のデジタル庁がデジタルインボイスの仕様JP PINT」を定めているからです(PINTはPeppol INTernational model for billingからとった言葉らしいです)。

JP PINTの利用は、今のところ義務ではありませんが、インボイス制度に対応していること、国外との取引にも対応していることから、消費税について慎重な取り扱いが求められる大企業や輸出・輸入業者には、導入のメリットが大きいものと見受けられます。

2) 現在の普及状況は?
Peppolは、欧州各国のほか、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなど30か国以上で利用が進んでいます。ベトナムでは、2022年7月より、個人事業者も含めた事業者による電子インボイスの発行が義務化されているそうです。

そうすると、近い将来、日本でも大企業や輸出・輸入業者を中心に、一気に普及が進む可能性はあります。逆に、普及しなければ、国際的な商取引からどんどん取り残されてしまうかも知れません。

デジタル庁ウェブサイトによると、2024年3月6日現在、「認定ペポル・サービス・プロバイダー」は36社。うち26社が外国企業(正直なところ、IBM以外はどんな会社か分かりません!!)、10社が日本企業です。マネーフォワードNTTデータ弥生会計TKCなど、税務・会計業界でおなじみの企業が目につきます。

また、経理のデジタル化に取り組む日本の「デジタルインボイス推進協議会(EIPA)」には、税務・会計ベンダーのほか、大手の会計事務所、システム会社、経営コンサルなど約200社が参画しています。半分以上が私でも見覚えがある有名企業です。彼らが「本気」を出せば、日本の請求業務が一気に変わる予感がする、と言ったら期待し過ぎでしょうか。

3) 中小事業者への影響は?
現段階では、デジタルインボイスの普及は限定的なようです。「北九州市DX推進計画」を策定した北九州市が、自治体として初めて請求書の受け付けをデジタルで行う実験を今年1-3月に行いましたが、「対応できる」のは数社に留まったようです。やはり、組織が仕事の仕方を変えるのは、簡単ではありませんね。

しかし、近い将来、一気に普及が進む可能性はあります。2023年10月のインボイス制度導入により多くの免税事業者(売上規模1千万円未満の事業者など)が課税事業者へ転換せざるを得なかったように、大企業のデジタルインボイス導入に伴って、中小事業者も導入を迫られることは、大いに考えられます。

企業間取引を生業とする事業者は、その時に慌てずに済むよう、また自社の業務効率化のためにも、請求業務のデジタル化を進めておいた方が良いかも知れません。

他方、消費者向けサービス事業者や飲食業者、商店などは、本件については、あまり影響を受けないように見受けられます。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【参考文献】
日本経済新聞
税務通信
デジタル庁ウェブサイト
マネーフォワード社ウェブサイト
北九州市ウェブサイト

徳田大輔

千葉県柏市の「ひとり税理士」です。財務コンサルと税務顧問により、経営者様をサポートいたします。会計ソフトはマネーフォワードを使用。マネーフォワードの導入支援や業務効率化支援を得意としています。

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