[消費税]2割特例のまとめ

事業経営

こんにちは。柏の葉税理士事務所の徳田大輔です。
消費税の「2割特例」について、基本的な事項を整理してみました。

以下、話を分かりやすくするため、国内において課税取引を行う国内事業者を想定することといたします。


1) 消費税の原則
事業者が国内で商品の販売やサービスの提供などを行った場合には、原則として消費税が課税されます。この取引(販売やサービス)に係る消費税は、売り手が国に納めます。売り手自身が「売上に係る消費税」を計算し、申告・納付することとなります。

納付税額の計算に当たっては、一定の要件を満たせば、「売上に係る消費税」から「支払に係る消費税」を控除して納めればよいことになっています。要件とは、税率ごとに区分した区分経理を行うことと、請求書・領収書等を保存することです。

例外的に、「前々事業年度の売上高」が1千万円以下である事業者は、納税義務が免除されます。よって、事業を開始して1~2年目の事業者や、3年目以上ではあるが売上規模が1千万円以下の事業者は、消費税を納める必要がありません(正確には、納税義務の判定ルールが細かく規定されています)。

ただし、この売上高要件を満たす免税事業者であっても、2023年10月より始まったインボイス制度により、インボイス(適格請求書)を発行できるものとして「登録」した事業者は、消費税を納めなければならないこととなりました。取引先の要請などによって「登録」せざるを得なかった事業者は、2023年12月末時点で142万事業者(うち個人106万、法人36万)とのことです。

2) 2割特例とは
インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者となった事業者については、令和5(2023)年10月1日から令和8(2026)年9月30日までの日の属する課税期間に係る消費税の計算において、「支払に係る消費税」を「売上に係る消費税×80%として計算してよいという、経過措置が取られることとなりました。

「売上に係る消費税」の2割を納めればよいという意味で国税庁(あるいは政治家)が「2割特例」と呼んでいますが、ロジックを考えると「8割特例」の方が適切な気がします。

それはさておき、原則どおり「支払に係る消費税」を積み上げたとしても、「売上に係る消費税」の8割に届く事業者はあまり存在しないと思われますので、消費税の納税義務が発生したばかりの事業者にとっては、ありがたい制度です。区分経理などの要件を満たさなくても良いので、事務負担もあまり増えません。

12月決算」である個人事業者は、次の年度の消費税計算において、「2割特例」が適用できます。ただし、ここに列挙した年度であっても、「前々年度の売上高が1千万円を超えている年度」については、「2割特例」は適用できません。
  令和5(2023)年 (10~12月)
  令和6(2024)年
  令和7(2025)年
  令和8(2026)年

仮に「3月決算」の法人であれば、次の年度に「2割特例」が適用できます。もちろん、「前々年度の売上高が1千万円を超えている年度」は、その限りではありません。
  令和6(2024)年3月期 (10~3月)
  令和7(2025)年3月期
  令和8(2026)年3月期
  令和9(2027)年3月期

3) 2割特例の注意点
2割特例の適用に当たり、事前の届出などは必要ありません。消費税の申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記すればOKです。仮に簡易課税制度選択届出書を提出していたとしても、2割特例を優先して適用することができます(本稿では簡易課税制度の説明は省略します)。

一方、前々年度の売上高が1千万円以下であっても「課税事業者選択届出書」を提出して、免税事業者となる「権利」を「放棄」している場合は、2割特例は適用できません。また、「前々年度の売上高が1千万円超」である年度についても適用できないのは、前述のとおりです。

今や、国税庁「確定申告書等作成コーナー」をはじめ、マネーフォワード、弥生会計など、ほとんど(たぶん全て)の申告書作成ソフトに、「2割特例」の計算機能が付いているかと思います。とは言え、自動的に「2割特例」を使ってくれるソフトはたぶんないと思われますので、忘れずに設定するようにしましょう。また、算出された納付税額が「売上に係る消費税」の20%となっているか、必ず確認しましょう。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【参考資料】
国税庁ウェブサイト
日本経済新聞

徳田大輔

千葉県柏市の「ひとり税理士」です。財務コンサルと税務顧問により、経営者様をサポートいたします。会計ソフトはマネーフォワードを使用。マネーフォワードの導入支援や業務効率化支援を得意としています。

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