こんにちは。柏の葉税理士事務所の徳田大輔です。
税理士は、納税者が税金に関する法令に従って適切な申告ができるようお手伝いをするのが使命です(税理士法1条)。よって、通常の税理士業務(税理士法2条に定める税務代理、税務書類の作成、税務相談)においては、国会でつくられた法律や行政機関でつくられた命令を「守る」ことが求められます。
しかし、法律や命令は、そんなに完成度が高いものでしょうか?
公平公正に、あるいは合理的に、つくられているものでしょうか?
いつまでも大事に守らねばならないものでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
政策によって恣意的につくられることは一般的ですし(*)、一部の人々を優遇・支援する反動で不公平を生じることはありますし、時代の流れに合わなくなることもあります。立法者の思惑どおりに実務現場で運用できない場合だってあります。
*設備投資、賃金アップ、省エネ製品の製造などを促すために法人税の優遇措置を設けるなど、税制で社会を誘導するのは、必ずしも悪いことではなく、むしろ合理的です。
そこで、税務に関する専門家たる税理士には、税金に関する法令について、意見を申し立てる権利が与えられています(税理士法49条の11)。
権利を与えられたからといって、もちろん個人的な都合ばかり主張する訳にはいきません。「決算時に法人税(または所得税)申告書に加えて消費税申告書をつくるのは面倒だから、消費税を廃止してください」と言ったところで、今どき通用しませんよね。
私は、日常業務を通して、次の3点に改善の余地があると考えていますが、世の中で広く受け入れていただくには、多くの方々の声を聴き、変更方法も含めて、より良い形に練り上げていく必要があります。
・所得税の基礎控除額
・消費税の免税点制度
・消費税の軽減税率
本記事からは脱線しますが、現在の私の考えを簡単に記します。 1) 所得税の基礎控除額 所得税は所得(収入から必要経費を引いた利益)に対して課税されますが、税率を乗じる前に、「生きるために必要な最低限の金額」を所得から控除できる仕組みになっています。 その中で基礎控除は、「憲法25条の生存権を保障するための最低生活費」の位置づけで、令和6年現在、48万円(合計所得金額2400万円以上の高所得者は0~32万)に設定されています。 最低生活費が月額4万円って、少なすぎませんか? 1日あたり1300円では、ともすれば食費にも足りません。他の税制や社会保障制度との調整は必要ですが、月額8万円(現行の2倍)くらいが丁度いいように思います。 2) 消費税の免税点制度 消費税は「前々年の課税売上高が1000万以下なら、当年の課税売上に係る消費税は納めなくて良い」という制度です。平成4年の消費税導入時に、小規模事業者への事務負担に配慮して定められました。しかし、導入から30年が経過し、コンピュータが普及して、小規模事業者への配慮はもはや不要でしょう。 むしろ、売上代金に消費税加算を謳っておきながら納税しない「益税」、新設の法人は2年間納税しなくてよいという「節税スキーム」、当該「節税スキーム」を防ぐため屋上屋を架す「複雑な判定制度」(新設でも資本金1000万以上なら課税、資本金1000万未満でも出資者が大法人関係者なら課税、前々年に単価1000万以上の高額資産を取得していたら課税など)といった弊害ばかり大きくなっています。 例えば「法人は1期目から課税事業者。個人事業でも課税売上高300万超なら、その年は課税事業者」というように、趣味や生活の範囲を超えている収入については、基本的に消費税を課すこととした方が、シンプルで良いと思います。 3) 消費税の軽減税率 令和元年10月に消費税率が10%へ引き上げられた際、飲食料品と新聞の定期購読代が8%に据え置かれることとなりました(厳密には、国税と地方税の内訳は変わっています)。 生活者としては、支払金額が低くなって喜ばしいかも知れませんが、事業者の事務負担は相当に大きくなります。取引の一つひとつについて、税区分を正しく入力しないといけないのですから(令和6年10月に開始されたインボイス制度では、すべての支払先について登録有無を確認しなければならず、さらに事務負担を増大しています)。 消費税は一律10%とし、生活が苦しくなる分は一定の給付や減税で手当てすればよいと思います。 |
幸いにも、独立開業して時間を自由に使えるようになりましたので、積極的に政治活動に参加するよう心がけています。「政治活動に参加」と言っても、プラカードを掲げて行進したり、勧誘の電話をかけまくったりするのではなく、国会中継をWebで傍聴したり、集会に参加して政治家の声を聴いたり、自論を述べて意見を求めたりして、情報を集め、自分の意見をまとめ、法改正の段取りを学んでいくための勉強が中心です。
「お上」が決めたことを「守る」だけなら、会社員時代と変わりません。より良い世の中をつくり、より納得のいく人生を送るためには、時にはルールを「変える」必要があります。私の税務に関する知識と経験を、ぜひルールの見直しに役立てたいと考えています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。