こんにちは。柏の葉税理士事務所の徳田大輔です。
本稿では、次の本を題材に、銀行員さんに思いを馳せてみます。
池井戸潤 半沢直樹シリーズ
「オレたちバブル入行組」(2007年、文藝春秋)
「オレたち花のバブル組」(2010年、文藝春秋)
「ロスジェネの逆襲」(2015年、文藝春秋)
「銀翼のイカロス」(2017年、文藝春秋)
「アルルカンと道化師」(2023年、講談社)
目黒冬弥「メガバンク銀行員ぐだぐだ日記」(2022年、三五館シンシャ)
1) 池井戸潤 半沢直樹シリーズ
2013年と2020年に放送された人気テレビドラマの原作です。主人公はエリート銀行マンで、社内外の陰謀や理不尽に立ち向かっていきます。
主人公の勇気ある行動の根幹にあるのは、銀行員として、あるいは人としてのプライドや正義感です。ただし、目的達成のためには、社内の人脈を駆使して相手を陥れたり、恫喝したり、大悪党を倒すため小悪党と取引したりしますから、必ずしも品行方正な正義の味方とも言い切れません。時には、上司のカバンから銀行通帳を盗み出したりもします。
ずいぶんな会社人間で、家族との夏休みの予定をキャンセルしつつ、同僚と飲みに出掛けます。もちろん、そうやって降りかかるトラブルを振り払い、出世競争に生き残り、家族を守っているのですが。
登場する悪役達は、支店長、業務統括部長、大臣といった大きな権力を持つ人たちです。現実社会でこのような肩書を持つ方々は、さすがにこんなに短絡的に他人を陥れ、私利私欲を追求することはないと信じていますが、「経営陣がM&Aに注力する計画を立てたから、自店の成績を上げるため、取引先に対して無神経に会社売却を迫る」ように「組織の論理」で行動するサラリーマンは、どの業界にも存在しそうです。
2) 目黒冬弥「メガバンク銀行員ぐだぐだ日記」(2022年、三五館シンシャ)
本稿執筆を機に出版社の三五館シンシャについて調べたところ、「社員数-だいたい1名」、「JR御茶ノ水駅聖橋口より徒歩63分(アメリカアリゲーターの歩みで。人なら徒歩7分)」、「刊行物-(設立初期の4作品のみ紹介した上で)この4冊だけじゃないんです。もっと出してるんです。2023年ごろまでになんとかします。今しばらくお待ちください。」などの表記があり、なんともトホホな会社ウェブサイトでした。よほど人手が不足しているのでしょう。私は本書を初めとする日記シリーズを3冊、森本卓郎氏の本を1冊所有しており、愛着のある出版社です。きっと、このような零細出版社が存在することで、言論の自由が守られているのでしょうね。
本書の主人公は、バブルの終わりごろに入行し、30年ほど勤続中の某メガバンク行員です。ということは、上の半沢直樹とほぼ同世代、私ともほぼ同い年ということになります。営業マンとして真面目に働き、後進の育成には手腕を発揮しましたが、上司に恵まれず出世競争から脱落。それでも、腐らずに店頭業務に従事している、愛すべきサラリーマンでいらっしゃいます。
ノルマに追われ、上司から詰められ、顧客からは時に感謝され、時に慰められ、時に冷たい仕打ちを受けます。それでも、顧客を騙して成績を上げるようなことはできず、愚直に業務に従事します。人としてまっとうな仕事をしているから、食いはぐれることはない。しかし、上司に気に入られなければ出世は望めない。サラリーマンの悲哀を感じさせます。
3) 自分の仕事との関連を考える
今年に入ってから3回、顧問先と銀行との融資面談に同席させていただきました。中には融資申請に成功した例もあり、多少なりともお役に立てたと自負しています。もちろん、経営者様の日頃の努力と将来の明るい見通しがあってこそ融資が下りたのは言うまでもありませんが。
一般に会社の社長さんは、会社の中で最も会社のことを知っている「最高の営業マン」ですが、とはいえ全員が「話し上手」とは限らず、資金繰りに窮する状況では肩に力が入ってしまうこともあって、銀行にうまく自社の状況や今後の見通しを話せないことも少なくありません。そんな時に、私が税理士の立場から会社の状況を整理してお話しすると、銀行の理解を助けることができるように思います。
銀行出身の税理士さんなどに比べると、私は必ずしも「銀行事情に詳しい」とか「融資に強い」といった営業文句は謳えませんが、それでも上のような書籍を読んだり、銀行出身税理士さんのブログ記事を読んだりして、銀行担当者様を慮り、お役に立てることがあると考えています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。