飲食に係る交際費の基準が変わります

事業経営

こんにちは。柏の葉税理士事務所の徳田大輔です。
令和6年度税制改正により、令和6年4月から飲食に係る交際費の扱いが少し変わるので、整理しました。
 ・交際費についての前提
 ・飲食代に関する令和6年度税制改正
 ・税制改正における注意点


1) 交際費についての前提
法人・個人事業主ともに、「会計帳簿は自己のルールで作ることができる」という大前提があります。ですから、事業主が何をどこまで「交際費」という名目の経費に算入しても、あるいは他の勘定科目を使っても、他人がとやかく言う筋合いではありません。

とは言え、税法上は公平性を保つため一定のルールを設けていますから、税金の計算上は税法に準じて金額を調整する必要があります。例えば、取引先を接待して帰宅のためのタクシー代を自社で負担した場合、自社で勘定科目を「旅費交通費」に仕訳したとしても、確定申告上は「交際費」の計算に算入するということです。いくら「勘定科目は事業主の自由だ」といっても、税法や会計の習慣からかけ離れた処理をしていると、思わぬ混乱を招きかねませんので、ほどほどにしましょう。

事業活動においては、「売上(収入)」から「経費(支出)」を引いた「利益(所得)」に対して法人税・所得税が課されますが、交際費を「経費(支出)」に算入できる金額には、「一定の制限」がかかります。大雑把に言うと、交際費の名のもとに自分がいい思いをし過ぎるのはダメという趣旨です。

一定の制限」は、次のように設定されています。
①資本金1億円を超える法人
 接待飲食費のうち50%を損金(税金計算上の経費)に算入できる
②資本金1億円以下の法人
 a)年間800万円まで、b)交際費の50%のいずれか多い金額を損金に算入できる
③個人事業主
 限度額なし

私の肌感覚としては、社員数50人くらいまでの中小法人であれば、交際費の金額について損金算入限度額を気にする必要はほとんどありません。800万円に届くことは、そうそうありませんので。ただし、交際費をテコに高単価な仕事を継続受注している法人が稀にあり、限度額に注意する必要があります。

2) 飲食代に関する令和6年度税制改正
交際費の代表格のひとつである飲食代については、「(税法上の)交際費」に含むかどうかの線引きがあります。取引先と会って話をするときに、お店でコーヒーや食事の支払いをしても、一定の金額までは「交際費」に含めない、つまり上記の一定の制限の計算とは無関係として良い、というものです。

現行(令和6年3月まで)は、「1人あたり5,000円以下」の飲食代は「(税法上の)交際費」に含めず、全額を損金(税金計算上の経費)にすることができました。

令和6年4月より、この基準が「1人あたり10,000円以下」に増額されます。物価上昇により飲食代が高騰していることや、新型コロナウイルスの流行により業績が低迷している飲食業界への支援を目的としたものだそうです。

繰り返しになりますが、社員数50人くらいまでの中小法人は、交際費が800万円に届くことはそうそうありませんので、この基準変更について過度に神経質になる必要はありません。納税額には影響しませんので。ただし、法人税申告書「別表15 交際費等の損金算入に関する明細書」に金額を記載する必要がありますから、1人あたり10,000円以下か超えるかは、仕訳時に補助科目を活用するなどして区分するよう心がけましょう。

3) 税制改正における注意点
この「10,000円」基準は、自社が消費税を税込経理していれば税込金額税抜経理していれば税抜金額で判定することとなります。よって、自社が税抜経理をしており、支払先の飲食店が適格請求書発行事業者(インボイス登録しているお店)であれば、支払額11,000円までOKということになります。自社が税抜経理で、支払先がインボイス登録していないお店であれば(80%控除の経過措置により当面は)支払額10,784円までOKということです(10,784×10/110×80%=784)。インボイス制度のために仕組みが少し面倒になっていますね。

今回の税制改正は、日本全国一斉に4月1日より行われます。よって、法人の事業年度の途中で会っても、3月支払分までは5,000円基準、4月支払分からは10,000円基準で判定することとなります。

なお、従来からのルールとして、飲食代を事業経費とするには、飲食に参加した者の名前や関係、店の名前や所在地などを記載した書類を保存しておく必要があります。お店からレシートを受け取ったらすみやかに、接待相手の名前や人数をメモ書きするようにしましょう。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【参考文献】
日本経済新聞
税務通信

徳田大輔

千葉県柏市の「ひとり税理士」です。財務コンサルと税務顧問により、経営者様をサポートいたします。会計ソフトはマネーフォワードを使用。マネーフォワードの導入支援や業務効率化支援を得意としています。

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