こんにちは。柏の葉税理士事務所の徳田大輔です。
飲食代に関する経費処理について、日常業務で気づいたことを交えて、以下に整理します。細かい論点は省略すること、ご了承ください。
・社員のみの飲食は「福利厚生費」
・取引先との少額な飲食は「会議費」
・取引先との少額でない飲食は「交際費」
1) 社員のみの飲食は「福利厚生費」
社内の結束を強めたり、社員をねぎらったりする目的で、事業主が社員に茶菓や食事をふるまったり、食事代の資金援助をしたり、宴会を催したりする場合があります。このような飲食代を会社が支払って経費計上する場合、勘定科目は「福利厚生費」となります。
役員やその親族だけの飲食、社会通念を超える高額な飲食、一部の社員のみが優遇される飲食、毎日のように頻繁な食事は、「役員報酬」や「給与」に該当します。会社経費にできる支払かどうか、冷静に判断しましょう。関連法令もありますが、まずは常識に照らして考えましょう。
なお、食事代の資金援助について「福利厚生費」で処理できるのは、通常(昼休みなど)の食事において、1食あたり援助額が支払額の50%以下、かつ月額3,500円以下までです。金額制限を超える部分は「給与」となり、源泉徴収税(所得税)の計算対象となるので、注意が必要です。ただし、残業に伴う食事代は、本人負担がゼロであっても全額「福利厚生費」でOKです。
また、税法上は会社の経費となっても、社会保険上は「給与(現物支給)」として計算される場合があります。食事代の資金援助については、社員負担額が「標準価額」(厚生労働大臣が都道府県ごとに定める金額。日本年金機構「全国現物給与価額一覧表」参照。例えば2024年度の千葉県の昼食代は270円)の3分の2未満であれば、報酬(給与)に含めることとなります(標準報酬月額の等級が上がります)。柏市周辺の外食代はたいてい1人あたり500円以上ですので、社員が50%以上を負担するルールにしておけば、税務上も労務上も「給与」扱いの必要はない、ということになります。
2) 取引先との少額な飲食は「会議費」
得意先、仕入先などの取引先と自社の社員が、会議に関連して一緒に飲食する場合、その支払が少額であれば「会議費」となります。具体的には、1人あたりの金額(そのお店での総支払額÷参加人数)が10,000円以下(2024年3月までは5,000円以下)なら「会議費」です。つまり、法人税法上、経費算入に制約のある「交際費」に含めなくてよいことになります。
実態が「取引条件を話し合うこと」でなく、「担当者と仲良くなること」が目的の飲食だったとしても、金額が10,000円以下であれば「会議費」で構いません。ここで、勘定科目については、「交際費」として管理し、法人税の計算過程において「交際費」から外す方法も認められています。
経費計上に際しては、年月日、取引先名、人数、支払金額、店名、店の所在地などがわかる書類を保存する必要があります。レシート類にこれらの事項をメモ書きし、紛失しないようにしましょう。
なお、国税庁Q&Aでは、1人あたり10,000円を超える場合であっても、「その費用が通常要する費用として認められるもの」であれば「交際費」に該当しないこととなっていますが、これはかなり例外的な状況を指すと推測されます。外国での食事代や、業務上どうしても必要な高級飲食店での支払といったところでしょうか。税務調査で指摘された時の説明が大変ですので、損金算入限度額に余裕がある場合は「交際費」に含める方が楽でしょうね。
3) 取引先との少額でない飲食は「交際費」
上記2) の裏返しですが、取引先との飲食代で、1人あたり10,000円超となるものは「交際費」となります。「交際費」については、①資本金1億円を超える法人は「交際費」の50%、②資本金1億円以下の法人は(通常)年間800万円までを経費として法人税額を計算できます(厳密には、いったん全額を経費として利益を算出した上で、「交際費」のうち経費にできない金額を加算して税率を乗じ、法人税額を決定します)。③個人事業主は、経費計上に制限ありません。
なお、ゴルフ、観劇、旅行の一環として供される飲食代、取引先の飲食店への送迎費、贈答品費(飲食物かどうかを問わない)については、全て「交際費」とします。
金額はお店の支払ごとに計算します。やや極端な例ですが、昼食の弁当代、午後の会議のケーキ・コーヒー代、夜の居酒屋での1次会は「会議費」、カラオケでの2次会、スナックでの3次会、取引先の帰宅のためのタクシーは「交際費」ということもあり得ます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【参考文献】
濱田康宏「法人税の最新実務Q&Aシリーズ 役員給与(第2版)」(2022年、中央経済社)
菅原英雄「イチからはじめる法人税実務の基礎(第5版)」(2023年、税務経理協会)
仰星監査法人「令和5年3月改訂 勘定科目別 仕訳処理ハンドブック」(2023年、清文社)
国税庁ウェブサイト
日本年金機構ウェブサイト
税務通信