こんにちは。柏の葉税理士事務所の徳田大輔です。
「増税メガネ」と揶揄された岸田総理がムキになって突然ぶち上げた定額「減税」。政策とは、こんな短絡的な発想で決まるものなのですね。もっと慎重に検討して決めるものだと思っていました。驚くばかりです。
国税庁は1月30日、事務作業の内容などを示した「定額減税特設サイト」を創設しました。制度設計はかなり大変だったことでしょう。国税庁で働く方々の苦労が偲ばれます。
さて、私が気になっていた点を中心に、制度の概要を見て参りましょう。詳細な説明は省きますので、正確な情報は国税庁ウェブサイトなどで確認いただきますようお願いいたします。
1) 事業主(給与支払者)の視点では
今回の定額減税は、令和6年分所得税が1人当たり3万円、令和6年分住民税が同1万円(いずれも本人と扶養親族の人数分)、減税となるものです。所得税は事業主が、住民税は市町村が、それぞれ徴収額を調整することとなります。
所得税については、令和6年6月以後の各月の給与に係る「月次減税事務」と、年末調整に係る「年調減税事務」の2種類の作業が発生します。
「月次減税事務」の対象となるのは、令和6年6月1日時点で在職中かつ源泉徴収税額表の甲欄が適用される人です。乙欄(副業)の人や6月2日以降に雇用された人は対象外となり、年末調整や確定申告で減税が達成されることとなります。
1度の給与支給では減税が完結しないケースが多く想定されるため、年の途中で転職した人の計算がどうなるのか疑問でしたが、そのような方は「年調減税事務」で対応されることが分かりました。
「年調減税事務」は、年末調整時に精算を行う作業です。住宅ローン控除後の「年調所得税額」から3万円×人数分の減税を行った後に復興特別所得税(2.1%)を加算して「納付すべき税額」を確定。月々の給与から天引き済みの税額との比較で、追徴税額または還付税額を計算します。
なお、住民税については、通常どおり、市町村からの通知に従って、各人の給与より天引して納付すれば大丈夫ですが、特に給与振込額を手計算している事業主は、月々の天引額が変動することに注意が必要です。
2) 個人事業主の視点では
令和5年分の所得が多かったために、所得税の予定納税が義務付けられている個人事業主は、7月及び11月に納付すべき税額が減額されます。もちろん確定申告においても、減額計算がなされます。
予定納税を行わない個人事業主は、確定申告の計算において減税されることとなります。
住民税については、市町村が減額計算してくれますので、手元に届く納付書に従って納税すれば大丈夫です。
3) 公的年金受給者の視点では
令和6年6月以後の公的年金より源泉徴収される所得税額が減税されます。
公的年金と給与の両方を受け取る人は、6月以降それぞれの収入において減税されることとなり、確定申告にて精算されます。ということは、6~7月頃に手元のお金が増えますが、翌年3月には納税により「返還」しなければならない可能性があるということです。ちょっと酷ですね。
4) 所得制限について
今回の定額減税は「合計所得金額が1805万円超」の人には適用されないのですが、所得税減税については「令和6年の合計所得金額」、住民税減税については「令和5年の合計所得金額」で判定することとなっています。
各税目の計算期間の違いに起因するのですが、もし「令和5年と令和6年で所得が1805万をまたいで大きく変動。足して2で割ったら1805万円以下」という人がいたら、「両年とも変動なく1805万円以下」の人に比べて不利益を被る可能性があります。まあ、この水準の所得がある方は、1人当たり4万円程度の不公平はあまり気にされないかも知れませんが。
なお、令和6年の合計所得金額が1805万円を超えることが確実な給与所得者についても、いったん「月次減税」されることとなっています。よって、6~7月の支給額が多くなり、年末調整後の支給額(もしくは年調還付額)が少なくなります。
以上、国税庁の「定額減税特設サイト」を見ながら、思いつくままに書き連ねました。
本記事では触れませんでしたが、令和6年中に家族の異動があったり、所得の大きな変動があったりした場合の事務処理の煩雑さを考えると、頭が痛くなります。
現時点で強く思うのは、「月次減税事務はナシにして、年末調整・確定申告で済ませればいいじゃん!!」ということです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。